正統史観年表

戦前の外国の行動は すべて自然な流れとして批判せず、日本国内にのみ すべての原因を求める自虐史観。「日本の対応に間違いがなければ すべて うまくいっていた」という妄想が自虐史観。どんなに誠意ある対応をしても相手が「ならず者国家」なら うまくいかない。完璧じゃなかった自虐エンドレスループ洗脳=東京裁判史観=戦勝国史観=植民地教育=戦う気力を抜く教育=団結させない個人主義の洗脳

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『大日本帝国の興亡』 ジョン・トーランド著 より引用

電文誤訳とハルの誤解

ルーズベルトは、当時、彼がスティムソンに語ったように
「もっと時間を稼ぐ」ための手段を模索していた。
しかし、そうしているうちにも、入手する情報は
危機が避けがたいものであることを物語っていた。

その情報とは、東郷(外相)から野村(駐米)大使にあてた
長い訓電を傍受したもので、甲乙両案の内容と極秘指令から成っていた。
傍受した内容は解読され、
翻訳されたうえ刻々にハルの手もとへ急ぎ届けられた。

訓電の冒頭は、日本が交渉を放棄したという印象を与えた。

「サテ 日米関係ハスデニ破滅ノ淵ニ達シ
ワレワレハソノ関係調整ノ可能性ニツイテ確信ヲ失イツツアル。」

こんな悲劇的なものの見方は、実は原文にはなかった。

東郷が実際に打電したのはこうであった。

「破滅ノ淵ニアル日米関係ヲ調整スルタメ
日夜タユマヌ努力ヲナシツツアリ。」

そしてこの訓電の二つ目のパラグラフの翻訳文は、
もっとハルの頭を誤導することになってしまっていた。

「モハヤ一刻ノ遅延モ許サヌホド 帝国内外ノ諸状況ハ緊迫シテイル。
シカシナガラ 帝国ト合衆国トノ間ニ友好的関係ヲ維持セムトスル真摯サカラ
慎重熟慮ノ結果 帝国政府ハ交渉ノ継続ニイマ一度賭ケテミルコトニスル。
シカシ コレハ最後ノ努力デアル。」

原文は調子から見て道理にかなったものであった。

「国内外ノ情勢ハ極メテ切迫シテオリ グズグズシテイル余裕ハナイ。
合衆国トノ平和的ナ関係ヲ維持シヨウトノ真剣ナ意図カラ
帝国政府ハ慎重熟慮ノ結果 交渉ヲ継続スルコトニシタ。
コノ交渉ハ ワレワレノ最後ノ努力デアル・・・。」

傍受電報の翻訳によると、このあと日本外務省は、
提案が受け入れられない場合は両国間の関係は決裂するだろうと述べている。

「事実ワレワレハ ワガ国土ノ運命ヲ
コノサイコロノヒトフリニ賭ケテイル。」

原文によると、このくだりを東郷は、次のように打電している。

「・・・ソシテ帝国ノ安否ハコノ交渉ニカカッテイル。」

ハルが次のように読んだ部分――

「・・・コノタビハ ワレワレハ友情ノギリギリマデヲ見セル。
コノタビハ 最後ノ取引キヲ行ナウノデアル。私ハ コノコトデ合衆国ト
ワレワレトノ難問ガ平和裏ニ解決スルコトヲ望ム。」

は、実際には東郷の手によると、次のようなものであった。

「・・・イマヤ ワレワレハ 完全ナ友情カラ平和解決ノタメニ
最大限ノ譲歩ヲ行ナウモノデアル。交渉ノ最終段階ニ臨ムニアタッテ合衆国ガ
事態ヲ再考慮シ 日米関係ヲ維持スルトイウ精神ヲモッテ事ニ
処スルコトヲ衷心カラ希望スル。」

次の正誤表が示すように、甲案に関する説明についても、
ハルは、はなはだ不正確な情報を得ていた。
(●はハルが入手した翻訳、○は実際に東郷が打電した内容)
―――――――
●これは当方が修正した最後通牒である。

○これは当方から出す事実上の最終譲歩案である。
―――――――
●(注意)もしもアメリカ政府が中国に日本軍が駐留する適当な期間について
質問したら、それはほぼ25年間であろうと漠然とした返答をしておかれたし。

○(注意)もし合衆国が必要なる期間について質問した場合には、
回答は、ほぼ25年を目標にしている旨を伝達されたい。
―――――――
●・・・合衆国が、わが軍の不確定な地域への駐留に対して強硬に
反対している事実にかんがみ、我々は占領地区と兵員を移動するもの
であるとして、かれらの疑惑を解くことを考慮している・・・・。

○合衆国が、わが軍の無期限駐留に対して強硬に反対している事実に
かんがみ、駐留の地区と期間を明確化する事によって、
彼らの疑惑を解く事を考慮している・・・。
―――――――
●・・・わが方は、これまで回答を漠然とした表現で行ってきた。
これからも、できるかぎり不明瞭な表現を使用し、無期限の駐留は決して
永遠の駐留ではない旨を、極めて婉曲な表現で伝達するようにはかられたい。

○・・・現段階においては「必要なる期間」という抽象的な表現に
とどめられたい。そして合衆国に対して日本軍の駐留は無制限でも
一定の期間中でもない旨を印象づけるよう、努力を払われたい。
―――――――
●四、根本方針として、我々は、これを日米間の公式協定案に
含めないよう希望している。

○(ハルの)四原則については、これを日米間の公式な合意協定の条項の中に
含めないようあらゆる努力を払われたい。
―――――――

ハルにとって、この最後の例一つをとっても、
日本が演じようとしていると彼が思い込んでいた詐欺行為への疑惑を
裏づけるのに充分だった。
実際は、これは、とんでもない誤りだったのである。

乙案の翻訳者は「ハル四原則」を「第四項」と取り違え、

【1】貿易の無差別。
【2】三国協定の解釈と適用。
【3】撤兵。

に関する結論部分と訳したのである。

すなわち、このくだりを訓電の主要部分と混同して
「四原則に関しては」を「四、根本方針として」と誤訳することによって、
また原文にはなかった「希望する」という字句を勝手に挿入する事によって、
日本側がそれに先立つ一項から三項までの全問題点を、
どれ一つとして公式協定に入れたがっていないというふうに
ハルに信じ込ませてしまったのである。
2009/05/02 09:00|年表リンク用資料
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